水上は究極のバリアフリー。パラカヌーでわかる考え方と発想

バリアフリーとは「多様な人が社会に参加する上での障壁(バリア)をなくすこと」(※)です。このような社会の実現を考えるにあたって、パラカヌーは大事な発想を教えてくれます。

 

パラカヌーとはオリンピックで行われるカヌー競技に対し、 下肢に障がいのある選手が参加する競技です。

水上に作られた直線200mのコースを、一直線に駆け抜けて順位を競うスプリント競技で、そのスピードにより「水上のF1」とも呼ばれています。そして、坂道や段差のない水上は「究極のバリアフリー」と言われています。

 

この記事では、パラカヌーがなぜ「究極のバリアフリー」と言われるのか、どのような仕組みで公平な勝負が成り立つのか、そして観戦や体験の機会について解説していきます。

 

※参照:政府広報オンライン 知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」(外部リンク)


パラカヌーが「究極のバリアフリー」と言われる理由

段差・坂道がない「フラットな環境」で、誰もが挑戦できる

 

パラカヌーが「究極のバリアフリー」と言われる理由は、水上が「坂道や段差」といった物理的ハードルを持たない点にあります。陸上では、移動そのものが負担になったり、わずかな段差が障壁になることもあります。

 

その一方で水上は、環境としてフラットです。このフラットな環境で誰もが挑戦できることが、パラカヌーの大きな魅力です。車いすからカヌーに乗り換え、水上に漕ぎ出せば、パドル1つでどこにでも行くことができます。

 

ここで大切なことは、風や波、バランス、フォーム、スタートの反応など、勝負を分ける要素がたくさんあり、環境がフラットだからこそ、努力や工夫が「競技の結果」として表れやすい、ということです。

 

このように誰もが「挑戦できる」ということが、パラカヌーの魅力の1つです。


パラカヌーは200m直線のスプリント競技で「水上のF1」

パラカヌーは、水上に作られた直線200mのコースで、順位を競うスプリント競技です。そのスピードにより「水上のF1」とも呼ばれています。

 

短い時間で勝負が決まり、初めて観戦する人でもルールが直感的に分かりやすいことが特徴です。

 

種目は「カヤック」と「ヴァー」

パラカヌーには大きく2つの種目があります。

 

◾️カヤック

両側にブレードのあるパドルで漕ぐ種目です。

真っ直ぐ進むことに特化した、バランスの悪いカヌーであるカヤックでは、両端にブレード(水かき)がついているパドルを用いて、 漕ぐ速さを競い合います。 

 

◾️ヴァー

片側に浮力体(アウトリガー)がついた艇で、片側のパドルで漕ぐ種目です。

カヌーの横に「アウトリガー」(浮遊体)がついており、カヤックよりバランスの取りやすい構造になっています。パドルもカヤックとは異なり、片側のみにブレード(水かき)があり、このブレードを用いて漕ぐ速さを競い合います。 

 

 

パラリンピックでは2016年リオ大会からカヤックが採用されており、東京大会よりヴァーが追加されています。


「バリアフリー」を実現する仕組み:クラス分けと用具の工夫

クラス分けがあるから、同じ舞台で勝負できる

パラカヌーは、障がいの状態に応じて、「L1」「L2」「L3」のクラスに分かれています。

カヤックはKL1〜KL3、ヴァーはVL1〜VL3という表記が使われ、同じクラス同士で競うことで、公平性を担保します。

関連リンク:競技パラカヌークラス分けとは

 

▼2025 ICFパラカヌー世界選手権大会で、瀬立モニカ 選手が3位入賞した「VL1 WOMEN 200M」の動画

 

一人ひとりに合う形で、同じ舞台へ

もう1つ特徴的なことは、用具や座位のサポートなどに一人ひとりに合わせた柔軟性があり、ルールの範囲内でシートや乗り込むコックピットの内部をカスタマイズすることができます。例えば、体幹の効かない選手は、背もたれの付いたシートの使用が認められており、シートの素材や形状などを工夫することができます。

 

ここにあるのは「一人ひとりの違いを踏まえて、環境・ルールを整える」という考え方です。この考え方はバリアフリーについて考える際に、大事な発想になるのではないでしょうか。


見る人にも、やってみたい人にも!パラカヌーが広げるバリアフリー体験

200mの直線勝負は、スタートからゴールまで一瞬です。

「どの艇が前に出たか」「加速の伸び」「最後の数メートル」など、短い時間に見どころが凝縮されています。

 

主な競技大会として、2026年 3月下旬に「令和8年度パラカヌー代表選手選考会」が香川県・府中湖カヌー競技場で開催される予定です。

 

体験会でパラカヌーを体験する

パラカヌーは、体験会が定期的に開催されていることも魅力です。全国各地で開催されていますので、ぜひお気軽にご参加ください。

カヌー経験が豊富なスタッフと、連盟公式のパラカヌーサポーターが皆さんの乗艇から水上体験までをお手伝いします。

 

体験会参加者の皆様からの声(一部抜粋)

  • 障がいあるのにパラカヌーやラフティングを体験できるとは思っていませんでした。スタッフ、サポーターのみなさんが笑顔で安心しました。
  • 水の上のスポーツを障がいある人も楽しめることを初めて知りました。
  • 障がいのあるお友だちにぜひ紹介したいです。
  • こんなに楽しいイベントをもっともっとたくさん開催してほしいです。

関連リンク:パラカヌー体験会

▼2025年11月に石川県小松市「木場潟カヌー競技場」で開催されたカヌー体験教室のニュース動画

会員・寄付・協賛によりパラカヌーを応援する

パラカヌー連盟は「パラカヌーを通じて障がいの有無に関わらず相互理解を深め、共に支え合う共生社会の実現」を目指しています。

どなたでも会員・寄付・協賛により、パラカヌーを応援することができます。

 

関連リンク:会員/寄付/協賛


よくある質問(FAQ)

Q. パラカヌーはどんな競技ですか?

A. 水上に作られた直線200mのコースで順位を競うスプリント競技です。「水上のF1」とも呼ばれます。

 

Q. 「究極のバリアフリー」とはどういう意味ですか?

A. パラカヌーは、坂道や段差などの物理的なハードルのない水上の環境で行われるために「究極のバリアフリー」と言われています。車いすからカヌーに乗り換え、水上に漕ぎ出せば、パドル1つでどこにでも行くことができます。

 

Q. 種目には何がありますか?

A. カヤック種目とヴァー種目があります。パラリンピックではリオ2016からカヤック、東京大会からヴァーが加わりました。

 

Q. クラス分けはありますか?

A. あります。障がいの状態に応じてクラスが設定され、同じクラス同士で競います。